赤字
『賢者の羅針盤』で元金融庁長官の五味廣文さんの『世界経済の金融情勢』をお聞きしました。
最近、ギリシア問題や日本国の財政赤字などについて、よく話題にあがりますが元金融庁長官の五味廣文さんは、これからの世界経済や日本経済をどのように、お考えなのでしょうか?
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◆「ギリシア問題」はギリシアの財政赤字の問題です。
ギリシアは債務残高がGDPの120%となります。
日本の場合の債務残高はGDPの190%と、ギリシア以上ですが、日本の国債はプロの金融機関が国債投資ということで買っています。
今のところ日本は「お金を借りられないという状態」になっていないのでギリシアほどの大問題にはなっていないのです。

◆「ギリシア問題」は・・・
「ギリシア国債が消化できるのか?」
つまり「ギリシアの国債を、適正な金利で買ってくれるところがあるのか?」ということです。
さらに、今回のギリシア問題は、ギリシアが債務問題の数字を正しく報告していなかったので、信用をなくしてしまったことも一因です。
「借金するために一番大切な『信用』をなくしてしまったのです。」
もしかしたらギリシア国債の借り換えができなくなるかもしれない。
つまり、ギリシアが借金を出来なくなるかもしれない。ということです。
そうなるとギリシアは、借金を踏み倒すしかない。
ギリシアという国の倒産です。

◆ヨーロッパの場合は、EUという国を超えた経済共通圏ができて通貨が統合されていますが、主権はそれぞれの国が持っています。
ギリシアのような財政危機に陥った場合、普通なら、自国の通貨を切り下げて輸出をしやすくするとか金利を下げるなどしてお金が廻りやすくするのですが、ヨーロッパ全体でユーロというひとつの通貨だと、ギリシアは自国のみで通貨の切り下げができないのです。

◆もしギリシアが破綻すると
今まで、ギリシアの国債を買っているヨーロッパの銀行にも危機が及びます。
そうなると「ヨーロッパ全体に、また大きな危機がくるのではないか?」という不安をもっています。

◆それでは「ユーロ加盟国がギリシアを助ければいいじゃないか?」となりますが・・・
例えば、夏の間に欲しいものも買わずに一生懸命はたらいてきたドイツの納税者からは「何故? 夏の間に遊び歩いていたギリシアを助ける必要があるのか?」ということになります。

◆ユーロという通貨の統合は「物の流れがよくなるので効果も大きい」というメリットがあるのですが、その反面、今回のギリシア問題のように「それぞれの国の財政状態と、主権のバランスをどうとるのか?」という課題があります。
ユーロという通貨統合では、この課題がリーマンショックの後、もろに出てしまいました。

◆今後は「ユーロという通貨の価値が確立できるのかどうか?」が課題になります。
今も、ギリシア国内では大規模なストライキが行われているので心配はありますが・・・
一応、IMFや各国の支援策があるなかで、ギリシアは財政再建していくという状態になります。
ただし、さらに大きな金融危機がヨーロッパで起きればユーロ圏をアメリカや日本も支援していかねばならなくなるということです。

◆ギリシア問題は今後
「どういうところを見極めていくことが必要ですか?」
今は金融危機ではなくて、その後の成長に戻れていない状態です。
銀行が貸し渋りを起こしています。中国は別ですが「銀行がお金を貸しやすいような状況がどれだけできてきたか?」
これを見ていくといいと思います。

◆個人消費を見ていくなら
アメリカであれば「住宅価格」、日本であれば「失業率」を見ていくのが大きな指標となります。
銀行が「貸し渋りをしなくても良い環境が出来てきたか?」
そこを見ていくのがポイントとなります。

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■木を見て、森を見よう
■各国と世界、各論と総論のバランスを見極めよう
■銀行が「貸し渋りをしなくても良い環境が出来てきたか?」を見極めよう
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